遺言による偏った遺産分割の例

全員が合意の上で均等に分割

4人きょうだいの長男であるAさんは、高校卒業後に金属加工工場で勤務し、定年退職した3年後に脳内出血で倒れ、ほぼ意識のないまま入院生活を送り1年半後、65歳で亡くなった。Aさんは一度離婚を経験し、その後は独り暮らしで子供はいなかった。両親もすでに他界していたため、法定相続人はAさんの3人の弟妹となる。Aさんの財産は、退職金の残り1000万円と、父親からの遺産500万円だった。

Aさんは、弟(次男)Bさんに全ての財産を相続させるという公正証書遺言を残していた。Aさんは、子供の頃から無口で真面目、大人になってからも仕事一筋で、少し古風な性格をしていた。世代的な思想も影響しているであろう父親の「長男が財産を継ぐべき」という考えを引き継いだのか、「長男である自分の後は次男が継ぐ」と考えたと予想できる。さらに相続財産には該当しないが、Bさんを受取人とした生命保険金500万円があった。(※注1)

故人の意志ではあるが、あまりにも偏った遺産分割にきょうだい仲がギクシャクした。  長女(Aさんの長妹)Cさんは、次女である妹Dさんを気遣った。Dさんは離婚後パート勤務で生計を立て経済的に楽ではない中、「比較的時間が自由になるから」と、入院中のAさんの世話を献身的に行っていた。幸いBさんも財産に固執するタイプではなく、2人の姉との関係を出来るだけ良好にしたいと考えていた。また、Aさんが入院中にはっきり意識が戻った場合、遺言書の内容を変更したのではないかとも想像した。そこで、3人は弁護士を交えて改めて基本平等分割をベースに話し合いをすることとなった。(※注2)

この案件は、Bさんの英断により、全員が合意の上で遺産分割協議書を作成し公正証書遺言の内容を変えることができた。遺言を作成した当時とは家族関係や財産など様々な状況が変わ っていることも多いので、定期的な見直しが必要ということを物語る事例である。
※実際の案件ですが、詳細は変更しています。

※注1 相続財産ではなく受取人固有の財産  ※注2 生命保険金500万円は注1の理由により分割対象から除いた

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